平野隆之,松尾喬『自衛隊に学ぶメモ術』要約
自衛隊の合理的なメモ術を使えば,正しく・早く・楽に書くこと,読み返したときに「メモしてよかった」と安心できる内容を書くことができる。メモの方法やツール,意志・情報伝達のコツについて,ビジネスパーソン向けに解説。
「1330 DCP G2 G3」←これが自衛隊の合理的なメモ術
さて,表題のメモを理解できただろうか。この例には,自衛隊の合理的なメモ術のエッセンスが詰まっている。
このメモ例について,簡単に解説しよう。
「1330」―自衛隊式の日時のメモ法
午後1時30分という意味。有名なことだが,軍隊では24時間表記が習慣づけられている。また,数字の間に「:」をつけることすら時間の無駄とされる。
ちなみに,この法則に従うと,日付(2016年1月14日(木))は以下のように表記される。
160114TH
曜日は,月―M,火―TU,水―W,木―TH,金―F,土―SA,日―SUで書く。メモを書き始めるときに記す日付も,この方式で書けば効率的だ。
「DCP G2 G3」―自衛隊式のメモ用の略号
結論からいうと,「1330 DCP G2 G3」の意味は「13時30分から,師団指揮所で作戦会議があり,師団の2部長,3部長が集合する」だ。
「D」は「Division」のことで,「勤務師団」を表す。場所を表すときは「@」を用いてもよい。「G2」は2部長,「G3」は3部長を,それぞれ表している。
この例のように,自衛隊ではメモを素早く取るために漢字ではなくカタカナやアルファベットを使う。部署や場所,役職などは,簡潔に表せるアルファベットを使って略している。
略記のルールは自分の会社に合わせて作成し,メモ帳の裏表紙に貼っておくとよい。
どんな組織でも情報伝達はコストを最小化したい
情報が正しく伝わらないと再伝達しなければならず,時間と労力を余分に使ってしまう。それが「命取り」になってしまうのは,自衛隊だけではないだろう。どんな組織でも,集団で動いている限り情報伝達の効率化は仕事の効率化につながる。
この本は,メモ術だけではなく,情報を伝える側にとってのテクニックも紹介されている。「逆質問」や「箇条書きの文書」などが役に立つだろう。
何よりも,1つ1つのメモ術・仕事術が,ちょっとした自衛隊のエピソードと一緒に紹介されている。別に「軍オタ」じゃなくても,少しはロマンがあるのではないだろうか。ネタとして楽しめる要素は多いと思う。
最後に,外出時に忘れ物をしないための言葉「み・か・け・は・さ・て・と・め」。それぞれ何を表すか分かるだろうか。気になる方はぜひ本書を手に取ってみてほしい。
『自衛隊に学ぶメモ術』感想
★★★☆☆
私は普段,Evernoteを使っていろいろな情報を整理している。ノートブックやタグを使うと効率的に情報を整理・検索できるから重宝している。
だが,最近気づいたことがある。デジタル・デバイスは,即時性に欠ける。
必要な情報をEvernoteに記録するとしよう。スマホのロック画面を解除→Evernoteにノートを新規作成するバッチをタップ→Evernote上で入力,という手順を踏まなければいけない。悪くはないのだが,手間だと感じていた。
だから,アナログのメモ術を身につければ,もっと効率的に情報収集できると思っていた。そんな中でこの本に出会った。
この本に対する満足度は高いが,星を2つ減らした理由は2つある。
1つは,かなり個人的になってしまうが,以前読んだ『自衛隊の仕事術』と重複する内容が多く,目新しさに欠けていたからだ(逆にスラスラ読めたという利点になるけども)。
もう1つの理由はもっと重要で,自衛隊とはあまり関係ないように見える,一般的なメモ術も混ざっているように見えたからだ。
例えば,会議では「重要な情報だけもらさず抜き出し,的確な言葉で書き留める」ことが必要だという。では,「重要な情報」をどのようにして見つけるか。それは,会議で配布される資料の一番上に書かれている会議のテーマだ,というのだ(p.23)。
重要な情報に絞ってメモを取るというのも,資料のタイトルが重要だというのも,至極当たり前で,ここに「自衛隊流」は感じない。以上の2点が星3つの理由になる。
とはいえ,私自身この本を読んでからは自衛隊流のメモ取りを実践し始め,今のところ1ヶ月以上続いている。それは,この方法が「よい」ものであることを何よりも証明していると思う。
次は軍隊関係の映画から「軍隊の合理的仕事術」学びたいと思っているところだ(笑)。
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