[サクサク理解]『必ずわかる!「○○主義」事典』吉岡友治

『必ずわかる!「○○主義」事典』(吉岡友治) 社会科学
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要約

100個以上の「○○主義」「○○イズム」を,「生きていくためには,何を頼りにすればいいのか?」「私の心はどう働いているのか?」など,様々な切り口から解説。その主義主張の生まれた歴史的背景や,他の主義との違いなどにも言及。各章末には,その章で紹介した「○○主義」同士の相関を図解している。

たとえ方が上手いから具体的に理解できる

「○○主義」の解説本というと何だかおカタい印象を持ってしまうが,この本は違う。例えば,リバタリアニズムの自由のとらえ方は次のようにたとえている。

リバタリアンのモットーの基本はDNDつまりDo Not Disturb!(ほっといてくれ!)。何だかホテルの朝,ドアのノブにかけておく札みたいだが,好きなようにやりたいので,あれこれ自分に干渉してくれるな,ということだ。(p.33)

体験主義は,どこかに必ずいそうな人にたとえて解説。

こういう人〔体験主義者〕は,自分と同じ「感じ」を持たない人は「信じられない!」か「人間じゃないみたい!」かどちらかになってしまう。なにしろ,言葉をはなから信用していないのだから,その使い方も乱暴で粗っぽい。自分が言いたいことを断定的に決めつけ,何の意義も受けつけない。自分の直接感じたことを信じているのだから,他人が何を言っても動じる必要がない。(p.103)

あ~いますね~。こういう人。

他にも,「快楽主義は引きこもり,禁欲主義はワーキングプア」など,意外な組み合わせの例え方も。

因みに体験主義と直感主義の違いをご存じだろうか。文字面だと何となく同じだが,本書を読めば両者の違いも見えてくる。ブ厚い本ではないけども,細かいところにもしっかり手が行き届いている本だ。

「事典」と言いつつ事典じゃない。でもそこがポイント

「事典」といいつつ読み物なので,辞書みたいにつまみ食い読みしたり引いたりするのににはあまり適さないかも。つまみ食いするとすれば,章単位とかかな。とにかくストーリーとして各主義を理解できるのが本書の最大の特徴だ。

もう一つ,ホンモノの事典だと,淡々と事実のみを客観的に解説してくれる。しかし,本書は筆者がどちら主義寄りの立場か,ある程度ウエイトをかけている

例えば,Chapter 2は「正しい政治はどうしたらできるか?」について解説している。この章では,やっぱり,民主主義,全体主義,議会主義,立憲主義などの,中学・高校の教科書で見かけて少し挫折しかけた用語たちが登場する。

苦手意識で読み進めるこの章の最後では,救いの手が現れる。「『正しい政治』とは『いい加減』を認める政治である」「民主主義というだけで全面的に肯定するような素朴な態度はそろそろ卒業したほうがよいのである」(p.70,71)と断言してしまっている。

そこまで断言してくれると,何となく安心感がある。分かった気になれる。この偏り具合が初心者にはちょうどいいのだ。

いろいろな主義の考え方を読んでいるうちに,お恥ずかしながら「結局どれがいいの!?」という気持ちになってしまう。各章末は,筆者なりの立場でどの主義が「よい」のか,書いてくれているので,初心者でもスッキリした気持ちで読み終えることができる。

これ一冊で事足りるほどの分量はないが,入門書としては完璧

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